Q1 サイバーセキュリティの定義
法令上「サイバーセキュリティ」はどのように定義されているか。
タグ:サイバーセキュリティ基本法、サイバーセキュリティの定義
1.概要
サイバーセキュリティ基本法(平成26年法律第104号、以下本項において「基本法」という。)第2条において、サイバーセキュリティが定義されている。保護すべき客体として情報、情報システム、情報通信ネットワークの3つを挙げており、外部からのサイバー攻撃への対応に限らないものとなっている。また、いわゆる情報のCIA(機密性、完全性、可用性)も定義の中に実質的に含まれている。
2.解説
基本法第2条は、サイバーセキュリティについて、「電磁的方式1により記録され、又は発信され、伝送され、若しくは受信される情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置並びに情報システム及び情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保のために必要な措置(情報通信ネットワーク又は電磁的方式で作られた記録に係る記録媒体(以下「電磁的記録媒体」という。)を通じた電子計算機に対する不正な活動による被害の防止のために必要な措置を含む。)が講じられ、その状態が適切に維持管理されていること」と定義している。
保護すべき客体(措置対象)に着目して整理すると、①情報、②情報システム、③情報通信ネットワークについて必要な措置が講じられ、それが適切に維持管理されていること、ということができる。
(1)情報の安全管理のために必要な措置
措置の対象となる「情報」は、「電磁的方式により記録され、又は発信され、若しくは受信される情報」と規定されており、例えば、口頭での情報伝達は含まれない。
また、必要な措置については、「漏えい、滅失又は毀損の防止」と、いわゆる情報のCIAを定義の中に実質的に組み込んでいるが、これに限定せず、「その他の当該情報の安全管理のために必要な措置」と広く規定しており、外部からのサイバー攻撃に対する対策に限らず、内部不正に対する対策等も含まれることとなる。
(2)情報システム及び情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保に必要な措置
ここにいう安全性の確保には、情報システム又は情報通信ネットワークについて外部からの侵入が防止された状態にあることが含まれており、信頼性の確保には、情報システム又は情報通信ネットワークが、災害等により障害が起こっても迅速に復旧することが含まれている。このように、情報システム又は情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保に必要な措置については、外部からのサイバー攻撃への対策に限られない。
(3)情報通信ネットワーク又は電磁的記録媒体を通じた電子計算機に対する不正な活動
情報システム及び情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保に必要な措置については、「情報通信ネットワーク又は電磁的方式で作られた記録に係る記録媒体(以下「電磁的記録媒体」という。)を通じた電子計算機に対する不正な活動2による被害の防止のために必要な措置を含む」としている。
サイバー攻撃は、一般的に情報通信ネットワークを通じたものが想定されるが、本定義においては、「電磁的記録媒体を通じた」ものも含まれており、例えば、ネットワークと連結していない制御系のシステムを標的とし、USBメモリ等の外部記録媒体に保存された不正なプログラムを作用させて制御システムを乗っ取ることも、「電磁的記録媒体を通じた電子計算機に対する不正な活動」にあたる。
なお、いわゆるフィッシング3については、電子計算機そのものに対して不正な活動を行っているわけではないので、「電子計算機に対する」不正な活動にはあたらないが、フィッシング対策のための措置については、一般に、情報の安全管理のために必要な措置、又は、情報システム及び情報通信ネットワークの安全性および信頼性の確保のための措置に含まれると考えられる。
3.参考資料(法令・ガイドラインなど)
- サイバーセキュリティ基本法第2条
4.裁判例
特になし